"インキラー"
4


「弱い奴がより弱い者をいたぶる時に見せる優越感に染まった表情ほど滑稽で醜い顔ってないと思わない、そこの自分よりも明らかにか弱い人間の腕を捻り上げ低俗にもほどがある脅迫を白昼堂々恥ずかしげもなく行っている虫ケラども」
 すらすらと良く通る声。
 台詞の半分も俺は良く解んなかったけど。
 その強烈な毒を孕んだ言葉はもちろん、例の美少女のような美少年が不愉快そうな顔つきながらも、明らかにこの不穏な状況に自ら進んで介入しようとしていることに俺は驚きを隠せなかった。
 虫けら呼ばわりされたサングラスが、突然の闖入者に焦って背後を振り返る。だが、その隙を突いて素早く美少年は男の側面に回り込み、安良木を緊縛しているその腕に拳に握った右腕を思い切り打ち下ろす。男が正面に向き直った時には、拘束をとかれた安良木はよろけながらも数歩前へと逃げている。
 狼狽えた様子のサングラスに美少年はにやりと笑いかけると、反撃の余地を与えることなく膝の真横へと鋭い下段蹴りを放つ。悲鳴を上げてがくりと膝を突いた男の側頭部に今度は容赦のない上段。
 うっわ、綺麗に蹴るなあ。
 背も大してでかくねぇし顔なんか女みてえなのに、こいつ絶対武道経験者だ、しかも相当強い。
 俺が眼を丸くしていると美少年が美麗な眉を歪め、それは見事に軽蔑しきった顔で自分の足元に倒れ付した男を見下ろす。そして、やおらおもむろに右膝を後ろに引くと、とどめの一撃を倒れた男の横っ腹へと何の躊躇いもなく穿つ。
 オイオイ……そんな鬼のような真似するのはあの宇宙人だけだと思ってたのに。
 その外見に似合わない苛烈な振る舞いに思い起こしたくもない人物の顔が一瞬俺の脳裏に過ぎる。
 憎たらしい面を追い払おうと頭を振ったところで、美少年の物凄いくっきりとした二重と視線が絡む。
 前髪の隙間から覗いたその目に浮かぶ侮蔑の色に肝が冷える。何だ? と嫌な感じの汗をかいてしまう俺を眇めた瞳で見据えながら美少年は凍えた声で云い放つ。
「呑気にこっちの戦況見ているなんて頭悪すぎだな、お前。自分の状況ちゃんと解ってんの? それとも拉致られて薬漬けにされてマワされたかったわけ? だったら邪魔したことを謝ってやるけど、そうじゃないならとりあえず礼ぐらい云えよ。お前の所為でこっちはゲームが中断になったっていうのに、詫びのひとつも口にしないなんてお前何様のつもり? 首の上に乗っかってるのは空っぽのお飾りなのか?」
 …………うっわ〜。
 性格悪ぅ〜〜〜〜〜。
 感心してしまうほど性格悪いぞ、顔は天使みたいなのに。あの顔でこの性格というのはある意味詐欺だな、いやあの顔で男って時点でそもそも詐欺か?
 ついそんなくだらないことを考えていたら、きつく眉を顰めた顔で一層睨まれてしまった。
「だから、お前状況解ってんの? そいつどうすんだよ、逃がしていいのか?」
 あ。
 忘れてた。
 事態の展開に付いていけずにぽかんと口を開けている黒Tに視線を戻すと、奴はびくりと肩を揺らした。ぱっとベルトから手を放すと、両手を上げて後退る。
「あ、ちょ、ま」
 中途半端に巻かれていたベルトを両手を押し広げてほどくと、俺はにっこり笑ってたった一言明確に告げた。
「死ね」
 ぐるりと半円を描いた足は頂点に達すると一気に男の後頭部目掛けて落下する。
 ハンマーのごとく叩き付けた踵を躊躇うことなく振り抜くと、黒Tは勢い良く顔から芝へと突っ込んだ。そのままゴキブリみたいに手足を痙攣させて静かになる。
 俺はついでにその頭を踏みつけ、より土に捻じ込んでやった。
 いっぺん人の頭足蹴にしてみたかったんだよな。でも流石に普通の相手にはする気になれなかったけど、こいつらみたいに胸糞悪い連中相手ならまったく良心は傷まんよ、ワハハ!
 …………はぁ、すっきりした!
 満面の笑顔で振り返るといきなり誰かが激突してきた。
「うおっ?」
「バカ!」
 バカバカバカバカ繰り返しながら安良木は俺を抱きしめた。
「ラギ?」
 泣いてんのか? って心配になる。けど、首を傾け覗き込んだその顔に涙はなかった。ただぎゅっと目を閉じている。安心すると同時に、嬉しいような困ったような、複雑な気分に襲われる。
「ごめん、でももう大丈夫だからさ、離れてくれよ、な」
「バカ! のバカ、大バカよ、ここまでバカだなんて思わなかった!」
 罵りながらも俺の腰に絡んだ腕にはますます力が篭る。俺はこっそり息を吐くと、その背に恐る恐る手を回してみた。
「……ごめん、すいません、俺が悪うございました、許してください」
 空を仰ぎながらおずおずと俺が抱きしめ返すと、安良木がやっとバカと云うのを止めてくれた。しばらく深い呼吸を繰り返す気配がしていたが、やがてくすくすと細い小さな声で笑う。
「変なの。、浮気が見つかった旦那さんみたい」
「何とでも云え。あのな、ほんとに恐い思いさせてごめんな」
 やけくそになって安良木の小さな身体をぎゅって抱きしめてみる。それで漸く俺はその肩が微かに震えているのに気が付いた。
 俺は元々男で喧嘩にも自信あるし、こういうのにも慣れている。
 でも安良木は普通の女の子だ、絶対物凄く恐かったに違いない。それなのに助けてとは一言も云わずに、俺に逃げろと叫んだ。震えるぐらいに恐かったくせに、泣いたりしない。
 ああ、本当に格好いいよ、安良木は。
「ほんと、ごめんな…」
 髪に顔を埋めて呟くと、安良木のしがみつく力が強くなった。
 自分が今女になっていることを心の底から残念に思う。何か俺マジで安良木に惚れたかもしれない。でも、今告ったってなあ……どうしようもねえもんなあ。胸の内で遣る瀬無い溜息を吐く。
 男に戻るまでお預けだが、戻ったら速攻安良木に付き合ってくれって云おっと、そんでもって最終的には嫁に来てもらおっと。
「…………東京はホンマに恐いトコやね〜……あれが噂に聞くレズっちうものやろか」
「東京は関係ねぇだろ? 大阪にだって捜せば居るだろ、別に」
「いや、居まへんやった」
「そりゃあ、アンタが見たことないだけだろ?」
「っか〜! 相変わらず生意気な二年坊やなぁ、先輩を立てろ、いつも云ってるやろうが!」
「アンタ、立てるもんがねぇんだもん、無いもんは立てられねぇよ」
「はっはっはっ、こら一本取られたわ〜ってちーと待てお前!」
「うるせぇぞ、黙れサル。おい、そこの無礼な女」
 ドレッドからポーターのリュックを受け取りながら、美少年は冷気を帯びた眼差しで俺を突き刺す。
 ……口元は笑っているけど目が笑ってねぇよ、こっえ〜。
「乗りかかった船だから一応忠告してやるけど、そろそろ警察来るぜ。通報を受けてから一番近い派出所からここまでチャリで約十五分、もう十四分経過してるんだよね、そろそろ逃げないとマズイと思うんだけど?」
「マジ!?」
 俺は安良木の身体を引き離した。
「ラギ、大丈夫か? 走れるか?」
 顔を覗き込むと、安良木は静かに笑って力強く頷いた。
「よし! オイ、お前、礼云えって云ってたから云ってやる、ありがとよ!」
 俺の言い種に当の美少年じゃなく、その後ろに居た連中の方がぎょっとなった。
「ほんとはこういう貸し借りって、俺、嫌いなんだけど、もうここには来れねぇだろうし、また会えるかわかんねぇから言葉だけで許せ。
 マジに助かった、サンキュ、もし会うことがあったら絶対声かけろよ、その時に借りは返す、んじゃな!」
 早口で云いたいことだけ云って、俺は安良木の手を引いて走り出そうとした。
 なのに後ろで連中が大爆笑したもんだから、つい振り返ってしまう。
「次に会ったらその時借りは返すって、アンタ恰好いいよ」
「いやあレズにしとくの惜しいわぁ……」
「レズじゃねぇっつーの!」
 ついつい突っ込んでしまう己の性が哀しい。美少年が目尻に溜まった涙を拭いながら、初めてやわらかい目の色で俺を見た。
「あんた名前は?」

 俺は即答した。だってせっかく友好的な態度になったのに、ここで変にもったいぶったりしようものなら、再度凍てつく視線とマシンガンみてーな口撃に曝されることは間違いないだろう。
「そう、ね。俺は椎名翼。ところでどっちに逃げるつもり?」
「あっち」
 俺はげっと呻いた。指を差した正門の方角、紺の制服姿のオッサン二人組みがこっちに向かって勇ましくチャリで爆走してくるのが見えたからだ。
「俺たち裏道知ってんだよね。どうしてもって云うんなら教えてやらなくもないけど?」
「頼む!」
 椎名はにやって笑った。
「マサキ、そっちの彼女の手引いて逃げろ。は必要ないよな?」
「たりめーだ」
 手を差し出した釣り目の方へと安良木の背を押しつつ、強気の態度で椎名を睨んだんだけど、実は俺、迫り来るポリに内心心臓バクバクしてた。
 それを見抜いてるのか椎名は意地悪く鼻で笑う。
「三手に分かれる、しんがりは俺が持つ、集合場所はいつもの通り、捕まるなよ!」
 頷くと同時に一斉に走り出す。
 なのに。
 俺はスタートを切ろうとして躊躇った。
 あるものが目に付いてしまったんだ。
 最初に俺がブッ倒した、事の元凶でもあるシドと呼ばれた男。
 その男のパンツのポケットから零れた物が滑らかに陽光を反射して俺を誘ったんだ。
 拾いに戻ったりすることは切羽詰ったこの状況で余りにも馬鹿げた行動だということは解りきっている。
 なのに、それでも俺はどうしてもそれが気になって走り出すことが出来ずに優柔不断に立ち竦む。
「おい!」
 俺は馬鹿だ。痛いほどそう思う。
 椎名の叱責を浴びながら、結局俺はわざわざ数メートル引き返すと右手でそれを引っ掴んだ。
 止まれという警察官の罵声を振り切るように、俺は今度こそ全力で走り出す。
「何やってんだ」
「わりい」
 苛々と俺をなじりながらも、速度を緩めて待っていてくれた椎名に俺は詫びた。
 他の連中はもう居ない。サツの追跡を眩ますためにばらばらの方向に逃走したのだろう。安良木のことが気になったが、確か足は速かったはずだ。それに今しんがりを勤める俺たちを間違いなく追ってくるはずだから、大丈夫だろう。
 何が気になったのか、もう説明をしてる間は無かった。
 椎名がスピードを上げる。
 同じように俺も回転数を上げた。


「お。帰ってきたぜ、おつかれさん〜」
 集合場所は公園だった、飛葉中のそばの。
 無事に合流出来たのはいいが、おかげで俺はもうふらふらのへとへとだった。
 チャリに乗っているとはいえ、本当に元気な警察官だったよ、畜生。延々付いてくんだよ、二十五分もさぁ。
 最後は古い石階段を駆け上り、それで漸く撒くことが出来た。向こうもチャリを乗り捨て、果敢に途中まで追跡してきたが階段半ばで足音は途切れた。職務に忠実なのは美徳かもしれないけど、別にガキ同士の喧嘩に貴重な時間を三十分も費やす必要ないと思う。もっと悪質なお年寄りを狙った引ったくりとかの検挙に力を入れて欲しいぜ、まったく。
 つーか、俺はフットサルしに来たのに何でマラソンしかしてねぇんだ……? 虚しい、虚しすぎる。
、大丈夫!?」
 よたよたと歩み寄る俺に向かって、ベンチに座っていた安良木が駆け寄ってくる。
 俺は右手を上げてその声に返事をした。けれど、とてもじゃないが立っていられなくて、ぜーぜーしながらゾウを模した背の低い滑り台へとへばりつく。頭の先から足の先まで全身が火のように熱い。頭が下がった所為で額に集まった汗がぱたぱたとピンク色した硬い肌へと滴り落ちる。
 約三十分、ほぼ全力疾走だったもんなぁ、ほんっっと死ぬかと思ったぜ。
、大丈夫?これ飲める?」
「ほっとけよ、呼吸が戻ってないだけだから、直に落ち着くよ」
 ドレッドからエビアンを受け取りながら、椎名が冷たく云う。
 同じ量を走っていたはずなのに、椎名の奴はもう喋れるまでに回復してやがる。
 くそう、やっぱ男の方が体力あんだよなぁ。いいよなぁ、俺だって男だった時は椎名と同じぐらい走れたはずなのに。
 僻みつつも俺は根性で上半身を起こすと、安良木の差し出すウーロン茶に手を伸ばす。口を付けると一気に渇きが襲ってきて、俺はそれが空になるまで一気に飲み干した。
「……っはぁ〜」
「なんや、見かけによらずオッサンくさいの〜ホレ」
 俺は金髪からポカリを受け取って、それも全部飲み干した。
 唇を手の甲で拭うと俺は滑り台に仰向けに転がった。目を閉じかけて椎名以外の連中が俺の方を見ていることに気付く。いつのまにやら他の連中も俺のいるゾウの滑り台に集まっていた。
「どういう内臓してんねん、このねーちゃん一リットル一気飲みしおったで」
「うるせえな、ケツをサツに煽られた状態で三十分走ってたんだ、ほっとけ、サル」
「さ、サル!?」
 金髪以外が爆笑する。
「ほらやっぱお前は万国共通でサルなんだよ」
「んなわけあるか、あほお! 可愛い顔してなんつーエゲツナイ女や、誰かそっくりやな!」
 またげらげらと笑い声が起こる。
 笑う気力もなく、俺は片手で目元を覆ってひたすら重い呼吸を繰り返す。夏の盛りはとっくに過ぎたとはいえあれだけ走ったんだ、汗でじっとりと重く湿ったTシャツが無遠慮にへばりついて気持ち悪い。安良木がわざわざハンカチを濡らしてきてくれて、俺の額に当ててくれたものの気持ち良いのは一瞬で、あっという間に俺の体温を吸い取って生温くなっちまう。
「で?」
 腕をずらして目蓋を開けると、椎名が顔の横に立っていた。その背後では何故かサルが脛を抱えて無様なダンスを踊っている。
「…何?」
「流石にあの状況で意味もなくぐずぐずするほど馬鹿じゃないだろ、お前。一秒でも早く動かなければならないのに、いったい何を躊躇った? 何を拾いに戻ったんだ?」
「ああ…」
 俺はハーフパンツのポケットに手を突っ込んで、尻を浮かせて中身を掴み出した。
「コレ」
 手を開いてゾウの背中に中身を零す。みんなが額を付き合わせる。
 俺はぐるりと身体を廻してうつぶせになった。安良木のハンカチがべしゃりと落ちてしまう。
「何だ、これ? 薬?」
 俺は落ちたハンカチの両端を持って額にくっつけながら、改めてそれを眺めた。
 白いパラフィン紙に包まれたものが四個だった。
 釣り目がそのひとつを手に取って、かさかさ音をさせながら包みを開いた。
 中にはやっぱり白い粉だった。
「なーんだ、あいつクスリが手放せないほどの貧弱くんだったのかよ、だっせ」
 俺が拍子抜けして云うと、みんなちょっと笑った。
「なるほどね……」
 それなのに、じっとその粉を見つめていた椎名だけは、酷く不機嫌に眉間の間に皺を寄せたのだった。
「何だよ?」
「マサキ、それを慎重に包み直せ、零すなよ。薬は薬でも、別の薬だよ、これは。十中八九ドラッグだ」
 俺はハンカチを取り落とした。
 椎名は忌々しげな口調で吐き捨てる。
「ここ一月ぐらいの間に、あそこでぶらぶらクダ巻いているだけの連中が急激に増えたような気がしていたのはそういうことか。確かにヤクの売買するには穴場だよな」
 その声を耳にしながら俺は寿樹の言葉を思い出していた。
 最近ガラの悪いのが増えたと云っていた。
 嘘だと思ったのに。
 本当だったのかよ……。
 その時突然着メロが鳴り出したから、俺たちは一様にびくっとした。
「ごめんなさい、あたしだわ」
 安良木が例のブルーの携帯を取り出す。
「あ……須釜君だ。はい、もしもし」
 俺はその名前にどきりとした。本当の事を云っていたのに、それを疑っていたことを後ろめたく感じていたからだ。
「……うん、大丈夫よ、はちゃんと無事に帰ってきたわ、ん、怪我もしてない、ただちょっと大変なことになってんだけど…」
 俺は安良木の手から携帯を奪った
「もしもし?」
?』
 電話の向こうで酷く安堵したように息を吐き出す気配がして、俺はまた少し後ろめたくなった。
 でも、あいつが俺にしたことを思えば別にこれぐらいされたって文句云えねぇよなって、俺は必死で自分を弁護する。
「俺たち勝手に帰るから、もうラギに電話すんなよ、じゃあな」
 俺は寿樹の返事を待たずに電話を切った。
「ごめんな、サンキュ」
「いいの?」
 携帯を返すと、安良木は何故か眉を顰めて俺を見詰めていた。その心配そうな顔の理由が俺には解らない。
「いいんだよ、あんな奴」
「お前レズのくせに彼氏もいるのか?」
 俺は寝転がったまま問答無用でサルの脇腹を蹴り飛ばした。悲鳴なんだか抗議なんだか意味不明の声が上がったが激烈無視して椎名に顔を向ける。
「で、どうする、これ?」
 腕を組むと椎名は伏し目がちに考え込む。
 俺は椎名の判断を待った。どう考えても俺にはこのメンツのリーダーはこいつに思えて仕方なかったからだ。
「……神聖なグラウンドで赦されることじゃないよな」
 椎名が呟いて、そして可愛い顔に不釣合いな悪魔的な笑みを浮かべた。
 つられて俺もにやりと笑う。
 予感がしたんだ、何て云うか、クサイけど冒険の予感がさ。
 安良木が俺のTシャツの裾を遠慮がちにひっぱって、もう一度「本当にいいの?」と尋ねてきた。俺にはやっぱりどうして安良木がそんな顔をしているのか解らない。
「いいに決まってんだろ? それより、ラギ、薬のこと寿樹には絶対黙っててくれよ?」
「えっ、どうして?」
「うるせぇからだよ、あいつに俺のこと口出しされんのなんかまっぴらだ」
 それだけ告げると俺は再び視線を椎名へと戻す。俺の胸はこの事件への期待に早くもわくわくと踊っている。
 数秒後には寿樹への罪悪感なんて俺の脳裏からは綺麗さっぱり消えていた。



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