闇の中、明滅する色とりどりのネオン


大勢の人は誰しもそれに夢中だった
歓声のようなカウントダウン
(5)

それなのに、私一人だけ凍り付いていた
(4)

一人だけ、私一人だけ振り返って
(3)

見つけてしまったのだ、それを
(2)

空虚な空洞を
(1)


カウントゼロ
私は何を考えるよりも速く飛び出した。



!」

目を開けたら目の前にパパの顔がありました。
大好きなパパが心配そうに眉根を寄せてを覗き込んでいます。
「パパ!」
は飛び起きて、夢中でパパにしがみつきました。
身体ががたがた震えて涙が止まりません。
「パパ、パパ、またあの夢よ、恐い、どうして、どうしてあんな夢ばかり」
、落ち着け。大丈夫だ、パパが居るだろう? 大丈夫だ」
パパがぎゅって抱きしめてくれました。
でも、なかなか涙が止まりません。本当に恐かったのです。
は悪い子ではありません。パパの云うことをちゃんと守る良い子です。それなのに、まるで罰のようにときどき悪夢がやってきます。いつも夜のように真っ暗なところには立っていて、何かとても恐くてとても悪いものがを狙っているのです。
「大丈夫だ、。俺が傍に居るから、絶対傍に居るから」
の目蓋にパパがキスをくれました。涙なんて美味しくないのに、そのままの涙を舐めてくれます。パパは魔法使いのようです。恐くて恐くて息をするのも苦しかったのに、パパがぎゅうってしてくれればそれだけで段々苦しくなくなってくるのです。
、夢だ、全部夢だ。ほら、俺が居るだろ? もう恐くないから、泣くな」
今度は指で頬に流れた涙を拭ってくれました。
が頷くと、パパが笑顔で頭を撫でてくれます。
「いい子だ。……悪夢が去っていくように」
そう云ってにキスしてくれました。
これはもう恐い夢を見ないようにする、とてもよく効くおまじないなのです。これをしてもらうと、不思議なことに本当にもう一度寝たって悪い夢はやってこないのです。
「うん、もう恐くないよ。ありがと、パパ大好き」
はパパに抱きつきました。パパの胸にほっぺをくっつけるとどきどきと心臓の音がします。はパパの心臓の音が好きです。こうしているととても安心するのです。
がうっとりとパパの心音に耳を傾けていると、頭の上からパパの哀しそうな溜息が落ちてきました。
パパの顔を見ると、溜息のとおりパパはとても哀しそうな顔をしています。
どうしてでしょう?
「パパも恐い夢、見たの?」
「……ああ、ずっと悪夢にうなされてる」
パパは笑ったけれど、全然楽しそうじゃありません。
は悪夢が大嫌いです。とても恐くて辛いからです。
と同じでパパも恐い夢を見ているなんて、とてもかわいそうだと思いました。
「じゃあ、もパパにおまじないしてあげる」
パパがいつもしてくれるようにちゅってキスをして呪文を唱えてあげました。
「悪夢が去っていきますように!」
「……ありがとな、
これで大丈夫です。
おまじないはよく効くのですから。
それなのに、パパはまたを抱きしめて、の肩に額をくっつけたまましばらく動きませんでした。


  EROTIC


私の名前はです。
パパの名前は三上亮っていいます。
はパパが大好きです。
パパは凄くかっこいいです。はパパはブラピよりかっこいいと思うのですが、何だか前に誰かにそう云ったら笑われたような気がします。でも、背も高いし、本当にとってもハンサムです。まだ若いのにおっきな会社の社長さんをしてます。
実はさっきから頭の上の方で目覚ましが鳴っているのですが、はまだ眠かったので目をつぶって嘘寝をしてしまいました。
だって、隣で横になっているパパがもう起きているのがにはわかっていたからです。
パパは仰向けに天井を眺めながら、それでもしばらくは目覚ましを止めませんでした。煩いのでが止めようかなと思いましたが、パパは何か考え込んでいるふうでもあったのでやっぱり黙っていました。
やっと目覚ましを止めると、パパは僅かに身を起こし、サイドテーブルの煙草に火を点けました。
パパはやっぱり何事か考え込んでいる様子です。
は嘘寝をしていて良かったなと思いました。だって、パパがこんなふうに考え込むのはきっと会社のことだからです。パパは会社のこととなると不眠不休で無茶をします。一生懸命働いてくれている従業員のためにも会社を潰す訳には行かない、それが上に立つものの責任だと云われればそれはそうでしょう。でもはパパが心配なだけなのです。家に帰って一緒にテレビを見ていてもいつのまにか考え事をしているし、以前は夜中に電話で起こされて家を飛び出すこともしょっちゅうでした。休まないと身体を壊すとがいくら云っても、パパはそれが余計に気に入らないらしく、いつも最後は女が男の仕事に口出すなと怒ってしまうのです。
あ。
パパがの頭を撫で始めました。
ゆっくりと大きな手のひらがいい子いい子してくれます。はパパにこうされるのも大好きです。だんだん身体から力が抜けていく感じがします。
そのうちに手のひらではなく、長い指がのおでこの髪を掻き分け始めました。くすぐったいけれど、は我慢して嘘寝を続けました。
でも、ちょっとごつごつした手の甲が頬を撫でたところで我慢できずについ顔を反らしてしまいました。は慌てて寝返りを打ってそれをごまかしてみました。
パパが仰向けになったの顔をじっと見ている気配がします。
嘘寝がばれてしまったんでしょうか?
がどうしようかと思っていると、ベッドが僅かに軋みました。薄目を開けてみると、パパが灰皿に煙草を押し付けて消しているところでした。
パパが再びこっちに向き直ったので、はついまた目を閉じてしまいました。
目を開けるか迷っていると、の顔のすぐそばが沈み込みました。パパが手を突いたようです。
目蓋越しにパパがの顔をじっと見ている気配がします。
ぎしりと今度は一層深くベッドが沈みます。
の頬にパパの唇が触れました。
確かめるように一旦離れて再びを見詰めている気配がします。
…」
今度は唇にキスをされました。何度も。
でも、不意に溜息と同時に唇は離れていきました。
「……馬鹿か、俺は」
パパは怒ったようにベッドを降りると、バスルームへと足早に歩いていってしまいました。
にはパパがどうしてあんなに苛々しているのか解りません。パパがキスしたっては全然構わないのに。


パパがのお洋服を選んでくれてる間、はパジャマを脱いでベッドに座っておりこうにして待ってます。
パパがクローゼットに詰まったいっぱいあるお洋服の中から、淡いピンクのワンピースと黒いカーディガンを選んでもってきてくれました。
ワンピースに脚を通すと、パパがの腕を取って袖を潜らせてくれます。
「パパ、今日のお夕飯はなにがいい?」
がそう云うと、パパはあっという顔をしました。
「…忘れてた。一昨日急に連絡があってな、悪いが今日の夜客が来ることになったから、一人分多く作っといてくれ。パパの古い友人で渋沢って奴だ」
「お客様がくるの?じゃあ、お夕食はご馳走にしなきゃ」
反対側の方も同じようにした後、抱きかかえるように背中のファスナーを閉めてくれます。
「別にご馳走なんか振舞ってやる必要はねぇよ、適当に何か作っといてくれればいい。あとでヒューに酒を買いに行ってもらうから、必要なものがあったら一緒に頼んで買ってきてもらえ」
「はぁい」
カーディガンも着せてくれました。それから髪を梳かして、最後にパパは唇につやつやするくちべにをつけてくれました。
ワンピースと同じ淡いピンクのファーが付いたルームシューズをパパが持ってきてくれたので、それを履いてようやく階下に降りました。
「おはよう、ヒュー、マギー」
二人もおはようと挨拶を返してくれました。
パパはテーブルに着いて新聞を読み始めました。はキッチンに行ってマギーと一緒に朝食の準備にとりかかります。
ヒューとマギーはの家族ではありません。でも一緒に暮らしています。パパは週に何度か近くの飛行場からシリコンバレーやニューヨークに行かなければならないのですが、パパの代わりに二人や、それからデボラたちが居てくれるのではさびしくありません。
お家にはパパと、食事の仕度や掃除や洗濯を手伝ってくれるヒューとマギー以外にもあと六人いるのです。車を運転してくれるベルグリッドさん、それからスタンリーにデボラ、パッフス、モービィス、ビルスタットです。
みんなで朝食をとると、パパはパッフスとビルスタットを連れて、ベルグリッドさんの運転する車で空港に出かけていきました。今日はハリウッドでパーティがあって挨拶をしなくちゃいけないそうです。まだはじまってもいないのに、もう嫌そうな顔をしていたので、頑張ってね、と云ってキスをするとパパはますます嫌そうな顔になってしまいました。パパはハリウッドもパーティも嫌いなようです。
はお外に出ちゃいけないと云われているので、パパのお見送りはいつも出窓からです。黒い車が小さく、見えなくなったので、はソファから降りて出窓を離れました。
キッチンに行ってお料理の本を開きます。一緒に来たデボラがの横に座りながら、本を覗き込んできました。
「もうお昼の準備?」
「ううん、お昼じゃないの。今日はお客様が来るから夜はご馳走にしなきゃいけないの」
そう云うとデボラは嬉しそうに笑いました。
「あら、そうなの。今晩はゴチソウなのね、楽しみだわ。あれを作ったらいいわ、ダイコンと魚が一緒になってたヤツ。アキラも好きでしょ」
「ぶり大根? ううん、だってあれはあんまりゴチソウじゃないと思う」
あら、そうなの? とデボラはまた笑います。
そうなの、と返事をしてはまた本を読み始めました。
今度はデボラは黙ってジャムを入れたロシアンティーとスコーンを持って来てくれました。
お夕飯を何にするか決めた後、ヒューにお買い物を頼み、は少しお昼寝をしました。起きたらもうヒューが買い物を済ませてきてくれたので、さっそくお料理に取り掛かりました。
ちょうど鴨が焼けた頃、車の音が聴こえました。
この辺りにはのお家以外にお家はないのでパパに間違いありません。
お鍋をマギーに任せて、は玄関に向かいました。スタンリーがドアを開けると、やっぱり入ってきたのはスーツ姿のパパでした。あっちで着替えたのか、朝着ていたのとは違う黒のフォーマルなスーツに、髪を後ろに撫で付けています。こういう姿を見るたびに、はやっぱりパパはブラピよりかっこいいと思いうのです。
「おかえりなさい」
そう云って抱きつくと、パパは頭をよしよししてくれました。香水と、少しお酒の匂いがします。
「ただいま、。ほら、今朝云ってた客だ。パパの古い友達で渋沢だよ、挨拶は?」
パパの胸から顔を上げると、パパのすぐ後ろに初めて見る人が立ってました。パパより背が高くて、モービィスと同じくらいありそうです。でもモービィスよりも優しそうな顔立ちをしていました。
「こんにちは、はじめまして、シブサワさん」
が挨拶すると、なぜかシブサワさんはびっくりした顔をしました。
そして何かよく解らないことを喋りながらパパを見ます。
変な言葉にもびっくりしてぎゅっとパパに抱きついてパパを見上げました。すると、少し哀しそうに笑いながら、パパまで何か解らない言葉を話しました。
ますますびっくりして目を丸くすると、へと視線を落として変な言葉を喋り続けながら、パパは哀しそうな顔をしてまたの頭を撫でました。
「ミカミ…」
シブサワさんのその声も、誰かに怒られたり苛められたりしたわけでもないのに、どうしてか哀しそうな声です。
不思議に思ってシブサワさんに目を向けると、シブサワさんがが見ていることに気が付きました。
そして、少し膝を曲げてと視線を合わせながらにっこりと笑いました。
「こんにちは、ちゃん。君のお父さんの古くからの友人の渋沢克朗です」
です、よろしく…」
が右手を差し出すと、渋沢さんはちゃんと握り返してくれました。とても大きな手のひらでした。それにパパの手に比べると、ずいぶん硬い手のひらでした。


その後はみんなで夕飯を食べました。
シブサワさんはが作ったものをおいしいと云ってくれたので、良かったです。
パパは甘いものが嫌いなので作っても食べてくれないのですが、いちおうデザートにミルフィーユを作っておいたのを出したら、それもシブサワさんはおいしいと喜んで食べてくれました。
それなのにミルフィーユを食べるシブサワさんをパパは物凄く意地悪そうな顔で見ていて、またあのよく解らない言葉で何か意地悪なことを云ったようでした。
でもシブサワさんは怒ったりはせず、にっこり笑って何か云い返しました。それを聞くとパパはとても不機嫌そうな顔になって、ちっと舌打ちしました。舌打ちするのはあんまりお行儀の良いことじゃありません。でも、パパは何度注意しても直らないのです。
パパとシブサワさんはその後も時々不思議な言葉で何やらふたりだけで云い合っていました。
でも、それは本当に嫌いあっているようには見えません。
だって、怒った顔をしているのにパパは何だか楽しそうだったのです。いつもならしないような、天井を見上げるぐらいいっぱい笑ったり、乱暴に大声をあげたりしています。
食事がすむとふたりはソファに移ってお酒を飲み始めましたが、お皿を片付けながらは何だか哀しくなってしまいました。
には解らないあの不思議な言葉で、の解らない話をしているパパはとても楽しそうです。
パパはといる時より、シブサワさんといる方が楽しいのでしょうか?
片付けをすますと、はふたりのところに近寄っていきました。に気付いたパパが、「どうした?」と声をかけてきます。
はパパの隣に座ると、パパの足に頭を乗せました。
「あ、こら、、寝るなら部屋で寝ろ」
「や」
「こら……デボラ! こいつを部屋に連れてってくれ!」
「やーっ!」
「ミカミ」
がパパのズボンをぎゅっと握りこむと、またシブサワさんが変な言葉でパパに話しかけました。
しばらくシブサワさんと話した後、パパは溜息をついて、デボラにやっぱりいいと云いました。
パパの足に頭を乗せたままこっそりシブサワさんを見上げると、シブサワさんと目が合いました。シブサワさんはにっこり笑いました。なんだか嬉しくなって、もにっこり笑い返して、頭を横に戻して目を閉じました。
そういえばオヤスミナサイのキスを忘れてしまいましたが、すごく眠くなってきてしまったので、はそのまま眠ってしまいました。

『可能性』

可能性はpossibilityです。
は急に目が覚めました。
目の前にはグラスとボトル。ちいさな時計はもう午前3時をさしています。こんな時間までお酒を飲んでいるなんて、パパたちは悪い子です。
起きているけど、は眠たかったので半分目を閉ざしてパパの膝に頭を乗せたままじっとしていました。
髪を撫でられている気配がします。この手はパパの手です。
「**…可能性*****…*…***」
またpossibilityです。ああ、そうです。不思議な言葉のナゾナゾがとけました。
パパたちが話していた不思議な言葉は英語ではなく、日本語だったのです。
そう思ったら、パパたちが何を話しているのか解りました。
「そうか…の両親は?」
は俺を父親だと思い込んでいるから、二人のことは他人に見えているらしい」
「そうか…で、来月本当にあげるのか?」
「ああ。こいつ字はかけるし。もともとその予定だったんだから別にこいつの意思無視してるわけじゃねえし」
「…つらいな」
パパは返事をしませんでした。
黙っての頭を撫でています。
の頭を撫でるパパの手のひらはとてもとても優しいものでした。


今度はおみやげを持ってまた遊びに来るからね、といっての頭を撫でてシブサワさんは翌日に帰っていきました。
夕方になって、シブサワさんを送るついでに会社に行っていたパパが帰ってきたので、一緒にお風呂に入りました。
パパは何だか元気がありません。
シブサワさんが帰ってしまったので、がっかりしたのでしょうか。
いつもだったら、いちごの入浴剤をいれると「甘ったるくてキモイ」とか「会社で笑われるだろ」とか怒るのですが、今日は何も云わずに黙っての髪を洗っています。
「…目ぇ閉じろ、
「うん」
目を閉じるとシャワーのお湯を頭にかけられました。パパの手が掻き混ぜるようにの髪の隙間をすすいでゆきます。
「ねぇ…パパ…」
流れ行く水の気配。泡が伝い落ちていきます。
目を開けてみました。
「あ? なんだ?」
「どうして…あっ」
とっさに手で目を押さえていました。
「どうした、? 目に入ったのか?」
頷くと肩を掴まれました。お湯の中をそのまま誘導してもらうと、シャワーが止まって蛇口からお湯が零れてくる音へと変わりました。
パパが今度は手を掴んで溢れる水の下へと手を運んでくれました。
「ほら、髪押さえててやるから、水すくって目ぇ洗え」
「ん…」
云われたとおりに水をすくって目をぱちぱちさせました。何度か繰り返すと、痛みは段々と薄れていきます。
「直ったか?」
「うん…」
は頷きました。
背後でざぶりとお湯が揺れて、泡と一緒にの背中にかかりました。
ぼちゅっ、という音。の背後のことだから、には見えていないのに、その音はきっとパパが身体を洗うためのスポンジをお湯の中につけた音だと解りました。
スポンジが水を吸い込む音です。
振り返ると、やっぱりパパの手にはスポンジがありました。が選んだハチミツ入りのボディソープをつけると、握るようにして泡立てていきます。
「髪は後でもっかい流すから、先に身体洗っちまおう。ほら、腕寄越せ」
云われたとおりに右腕を差し出すと、パパがお姫様にするみたいにの手を取りました。指の先から神経質にスポンジを滑らしていきます。泡はの薬指に嵌っている指輪の上も撫でていきました。
「あのね、指輪にね…また傷がついちゃったの…ごめんね、パパ…」
ちらりと見ただけで、パパは別に表情を変えたりしませんでした。
「別に構わねぇよ。そりゃ、傷くらいつくだろ、普通に生活してりゃ」
手首から二の腕を撫でていくスポンジ。肩を辿り顎の下、鎖骨に泡をなすりつけて行きます。
「…ごめんね」
?」
ざぶりとまたお湯が揺れました。
パパがの手を落っことしたのです。泡を掻き分け距離を詰めると、パパはの顔を覗きこみました。
「何だよ、まだ目が痛いのか?」
首を振りました。
もう目は痛くありません。
でも涙が出てくるのです。
「痛くない…でも、痛い…」
「何がだよ? 云ってみろ、
パパが濡れた指での涙を拭ってくれました。その動きにあわせて水面が揺れて、泡が舞い上がります。
「わかんない。ねぇ…パパとシブサワさんは…」
何のことを云っていたの?
急に頭がちくちくするような感覚に襲われて、言葉が喋れなくなりました。
「なんだ、渋沢がどうかしたのか?」
頭が、痛いかもしれない。何を云おうとしていたのか、よく解らない。
凄く混乱する。混乱している。
どうしては泣いているんでしょう?
「パパ…」
手を伸ばして触れてみるとパパの身体はびくりと強張りました。それがまた哀しい気分を誘います。
裸の肌は熱を帯びて濡れていて、密着するとどうしてか余計に泣きたくなりました。
「パパ…パパはツライの?」
そういうと、パパの身体はますます強張りました。
、お前何云ってんだ?」
パパはの肩を掴むと、強引に身体を引き剥がそうとします。
「イヤ、イヤっ!」
離れるのが嫌で、しがみつこうとした所為で、パパの背中に爪を立ててしまいました。
を無理矢理引き離そうとするから、の肩にパパの指先が食い込んで痛みました。
なんでこんなことになってしまったんでしょう。
痛くて哀しくて胸がつぶれそうです。身体から力が抜けて、お湯の中に身体が沈んでいってしまいます。それに気付いたパパが今度は慌てての身体を抱き止めました。
、お前急にどうしたんだ?」
力の抜けたの身体が沈まないよう、パパはを抱えて浴槽に寄りかかりました。
「本当にどうしたんだ、お前? 大丈夫か?具合悪いのか?」
は首を何度も振りました。そうじゃないのです。
パパの顔を見上げると、とても困ったような顔をしていました。
こんな顔をさせたい訳じゃないのに。
腕を伸ばして、はパパに縋りつきました。首に両腕を回しても、もうパパは振りほどこうとはしませんでした。
「…イヤなの、はイヤ、パパと離れるのイヤ、離れるのイヤ」
涙は次から次へと溢れてきます。
どうしてなんでしょう。
「……」
の肩口に溜息のようなその声が零れ落ちました。
パパはを抱き寄せると、髪を撫でてくれました。何度も。
そうやって何度も何度も髪を撫でながら、時折パパの唇が微かにの首や肩に触れてはすぐに離れていきます。
「安心しろ、。俺は何があってもお前の傍に居るから」
「本当に…?」
「ああ…ずっと傍にいる」
は目を閉じました。
どうしてなんでしょう。
パパは何も云わずにずっとを抱き締め、髪を撫でてくれています。
ずっと一緒にいる、って云ってくれました。
なのに、涙は止まりません。
は何がそんなに哀しいのでしょう。
湯船のお湯だけがどんどん冷たくなっていきました。


一週間後、はパパと久々にお出かけしました。
この前出かけたときに頼んでおいたドレスが出来上がったので、それの試着の為のお出かけです。
三階建てのお店にはお姫様のような白いドレスでいっぱいで、は見て回りたかったのですが、今日もそれは叶いませんでした。パパはが一人で何かするのをとても嫌がるし、一人でお散歩することはもっと嫌がるのです。
なので、パパに手を引かれて今日もまっすぐ三階に向かいました。ドレスがいっぱいある一階や二階と違って、三階は広い試着室と応接セットがあるだけのゆったりしたお部屋です。天井の半分以上がガラス張りになっているので、天気のいい今日なんかはとても空が綺麗に見えます。
パパとスタンリー、デボラを残してはお店の人と試着室に入りました。
二人の店員さんに手伝ってもらって、真っ白いドレスに着替えました。ふわふわしたスカートは本当にお姫様のドレスのようです。
試着室を出ると、スタンリーは口笛を吹き、デボラは「とても綺麗だわ!」と云ってくれました。
パパはと思って目を向けると、と目が合うと笑ってくれました。
どうやら気に入ってくれたようです。もほっとして笑いました。

その瞬間でした。

荒々しい轟音。
頭上を横切る巨大な影。
咄嗟に顔を上げると、青い空に鋼の翼。
ガラス越し、向かいの右側のビルの大きなプラズマテレビ。
そこに映っている映像。
男の手にある黒い凶器。
こちらに向けられた空虚な空洞。

「あ」

『ああ、びっくりさせてごめんなさい。最近ここも飛行ルートになったのか煩くて』
(音が、遠い。あたまに、洪水みたいに――)
『ずいぶん低かったですね。こう煩いんじゃ地価にも響くんじゃないですか?』
(ああ、そうだ、あのとき)
『夜は飛ばないし、毎日ってわけでもないんですけど、でもきっと影響するわ。頭にきちゃう……あ、ら、奥様? どうなさったの?』
?』
(私、そうだ、あのとき)
!?』


ちょうど大きなプロジェクトの真っ最中だった。亮も私も冗談抜きで不眠不休で走り回っていた時期。
(闇の中、明滅する色とりどりのネオン)
本当はパーティなんかより休息が欲しかったけど、出ないわけには行かなかった。だって自分とこが納品したものが入ってるスタジオの落成式だったんだもの。
(大勢の人は誰しもそれに夢中だった)
(歓声のようなカウントダウン)
(5)
ちょうど総電源に火を入れようとしていた時。皆そっちに気を取られていた。
(それなのに、私一人だけ凍り付いていた)
(4)
信じられなかった。警備は何をやっているのか。
(一人だけ、私一人だけ振り返って)
(3)
偶々振り返ったのだ。そして見つけた。
(見つけてしまったのだ、それを)
(2)
向けられている先がどこかを考えて驚きが恐怖に変わった。
(空虚な空洞を)
(1)
壇上には亮以外にも何人も人がいたのに、間違いないような気がした。
敵なんて即座に三ダースは云える。
(カウントゼロ)
(私は何を考えるよりも速く飛び出した)
銃口の射線上に飛び出すなんて馬鹿な真似が出来たのは愛してるからなんて奇麗事じゃない。
だって、亮は本当に腹の立つ男なんだから。
我侭だし、気が短いし、頑固だし、倒れるから休めって云っても全然聴いてくれないし、おまけに最後は女は黙ってろとか今時男尊女卑まるだしの台詞吐いたりするし。
それでも尊敬してる。
自分の失敗は勿論、部下のミスだって任せた自分の責任だっていって他人に泥を被せるような卑怯な真似しないし、頑固じじいなくせに本当に自分が間違ってる時は結構あっさり非を認める。そういう責任感が強いとことか潔いとこは好き。
私は女の自分を憎んでいた。
男というだけで楽に出世できる男たちが大嫌いだった。正当な評価がもらえないことにいつも不満を感じていた。くだらない仕事にうんざりしていた。
でも、亮に会った。
初めて女で良かったと思った。
だって、亮は本当にあまりにも腹が立つ男だったから。
顔が良くて、それ以上に頭が良くて、才能に溢れててそれなのにどっか脆くて、憎たらしいのに可愛げがあって、好きになる以外、道がなかった。
これまで働く理由なんて自分の為でしか有り得なかったのに、どう足掻いてもその差を埋めようがないぐらい自分より有能な奴に会ってそれが変わった。
これまで意地になって積み上げてきた自分のキャリアなんかより、そいつの成功する姿がとにかく見たかった。
この世に亮の代わりはいない。
こんなとこで亮は夭逝していい奴じゃない。
血反吐吐きそうなスケジュールに皆が耐えてくれてるのは亮がいるからだ。ウチより条件いいとこに移らないで残ってくれてるのは、どんな大企業より面白い仕事を生み出す亮の柔軟な発想力に皆惚れ込んでいるからだ。だから、大丈夫、私の代わりは山ほどいる。
口惜しいから一度も口にしたことはないけど、私は残りの人生、とっくに全部亮に賭けてしまったのだ。
私なんて影で踏み台でそれで構わないから、上に行って欲しかった。

そうしない方が後悔する、それが解っているから私は飛び出したまでだ。



!」
「…あ」
急に光を取り戻した視界に飛び込んできたのは酷く真剣な亮の顔だった。
指でちょっとでも突付いたらそれだけで泣き出しそうな表情。カールビンセントの意地悪じいさんが見たら大喜びしそうだわ……。
「おい、! しっかりしろ!」
「…ア、…ラ」
「え?」
私を抱きかかえていた亮が目を見張る。
、まさかお前記憶が…」
亮の声は微かに震えていた。
上手く力が入らない右腕を伸ばすと、私は亮のスーツを掴む。
「にゅ、入札は? カタリスクの入札どうなったの?」
「…は?」
亮が物凄く変な顔をした。
反応の鈍さに少々苛立って、私は亮の腕から身を起こすと掴んでいた袖を揺さぶる。
「ねえ、どうなったのよ?まさかグスタフごときにしてやられたりしてないでしょうね?」
「あ、ああ、ウチがとったぜ、もちろ」
「よし! あ、じゃあ、アンタを狙ったあのゴキブリ野郎は?」
「今弁護士が精神鑑定を」
「冗談じゃないわ、心神喪失なんて認めないわよ!ウチは?亮誰雇ったの?」
「ニルコムのピーター・ベンズ。この手の裁判じゃ負け知らずだ」
「エライ!じゃあ勝ったも同然ね、裏はとれてるの? さすがにグスタフはそこまでアホじゃないと思うけど、クレイスタンのあのデブとテクニカのパープリンなら……あら、どうしたの亮?」
「……お前」
深い溜息と共に私の背中から亮の腕が滑り落ちた。
…テメエ、フザケンなよ…てめ、散々心配かけさせて…それが記憶が戻るなり入札だの、裁判だの…」
足を崩して絨毯にべたりと座り込むと、亮はさっきまで私を抱きかかえていたその手で自分の目元を覆った。そのままぐしゃりと髪をかきあげながら呻くような声を漏らす。
「人がどんな思いで…」
私は驚いて亮を見た。
だって、目の前の男は三上亮だ。
超俺様で人のことなんて省みなくて自分に他人が合わせるのが当然って感じで、何より三十分前まで点滴打っててそれで漸く歩けるようになったのに会議じゃ本当に38度の熱があるなんて嘘なんじゃないかってぐらい理路整然と怜悧な台詞を吐くだけ吐いたら終わるなり倒れるようなプライドの塊みたいな男だ。
そういう男がこんな店の真ん中で人目も気にせず弱音を吐くなんて俄かには信じ難い。
どうすることも出来ず、俯いて表情を隠したままの亮を馬鹿みたいに見つめていると、不意に入り口の方で小さな口笛が鳴る。えっと思って視線を上げると、二人の店員と共にスタンリーとデボラが出て行くところだった。
スタンリーはウインクを、デボラは投げキスを置き土産にドアを閉めていった。
まったくあのスチャラカ夫婦は…。
でも撃たれたショックからいわゆる記憶喪失になってたっぽい間、あの二人にもかなりお世話になったぽい…というか、デボラにずいぶん、私、面倒見てもらってた、ぽい…?
…………あの二人のことだ、一生その間のことをからかい続けるに違いない。
ああ、今から頭痛いわ…。
私は眩暈を覚えそうになりながら、溜息を吐くとそっと亮に顔を近づけた。
「あの、亮、ごめんね」
「…
空いてる方の指でちょいちょいっと招かれる。
ここで何なのとか質問したり逆らったりしたら余計にヘソを曲げるのは亮相手に常識だ。
云われた通りにドレスの裾をたくし上げ、膝歩きで距離を縮める。そういえば何このドレス? と思った時だった。
「きゃっ!」
物凄い乱暴に抱き寄せられる。
抱き合う、とかそんないいものじゃなくて、私の両腕の上から回された亮の腕はとにかく暴力的なぐらいの強さでぎりぎりと私を締め上げる。
死ぬかと思うぐらい苦しいけど、ここで痛いから離せなんて口にしたらそれこそ本気でこのまま背骨をへし折られそうだ。
仕方なしに文句も云わずに我慢していると、しばらくして漸く腕が緩んだ。私のむき出しの肩に顔を埋めたまま亮が囁く。
「…おい、傷はどうだ? チャンは平気だって云ってたけど、本当に大丈夫なのか?」
これだけ締め上げといて今更…。
完治してないならとっくに高圧に耐え切れず血が噴出してるわよ。
溜息を吐くと、私はやっと身動きとれるようになった身体をずらして、亮の背中へと腕を回した。
「平気よ。ねえ、私、割合最近の…渋沢君がこの前遊びに来たこととかならちょっとは覚えてるんだけど、撃たれた直後のこと全然解らないから教えてくれない?」
「俺を庇ってしゃしゃり出てきたどっかの馬鹿は背中から撃たれた。左の肺を弾丸は貫通、すぐに病院に搬送されたが多発性肋骨骨折と血気胸が生じていた為、すぐに緊急開胸で数カ所肋骨を固定し止血手術が施された後ICUに移された。けど、そのあと肺合併症を起こして、一週間後にもう一度手術が行われた」
あらあら…私本当に死にかけてたのね。
相変わらず亮は私の肩に顔を伏せているから、何かを口にする度に吐息が肌に触れてくすぐったい。
どうにか避けられないものかと、僅かに身じろぐとまた強引に抱きすくめられた。
「お前、ときどきちゃんと目ぇ覚まして俺の名前呼んだりしてたんだぜ、なのに二度目の手術から三日後だ、いきなり全部忘れやがった。ガキみてえに痛い痛いって泣くばかりで、自分の名前もろくに云えない。挙句の果てにどういうつもりか俺を父親と間違えるようになった。俺は父親じゃないと何べん云ってもお前は理解しない、仕舞いには決まって泣き出す、パパはのことが嫌いなの、ってな。だからしょうがねえから俺が父親の振りをすることにして引き取った」
「………悪かったわよ」
これは…亮にも一生云われ続けるわね…。
というか、一生? あの、さっきから疑問には思ってんだけど。
「亮、もうひとつ訊いていい?このドレスは何?私が幼児化している間に世間の感覚が変化したんじゃなければ、ウエディングドレスに見えるんだけど」
ほんの少し亮が身を強張らせた。けど、すぐにまたぎゅうぎゅうと締め付けてくる。
「それ以外の何があるんだよ、このバーカ」
「イタイ、イタイって、もう! また記憶喪失になったらどうするの!」
そう云うとぴたりと腕の力が弱まった。
あら、効果覿面じゃない、これ。喧嘩した時のいい切り札になるかも。
馬鹿なことを考えつつ、思うさま酸素を吸い込む。ああ、酸素がこんなに美味しいなんて。文字通り一息ついたところで、私は殆ど無意識に亮の背中を撫でていた。
瞬間、呼吸が止まりそうになった。せっかく潤った肺から酸素が毟り取られていく。
触れた背中に私は愕然としていた。
もともと細身だったけど、肉が削げてやけに骨っぽくなっている。
さっき、亮はどんな思いで、って云ったけど。
私は亮じゃないから亮がどう思ってたのか正確に知ることなんてどう足掻いても不可能だけど、でもこれはひとつの答えだ。どんな思いで生活してたらこんなになるのか。
全身から力が抜けて私は亮に凭れかかった。
「亮…馬鹿じゃないの」
泣きたいぐらいに嬉しいのに、それでも云わずにはいられない。謝罪や感謝よりもそんなふうに消耗させてしまったことが悔しくて哀しかった。
亮は金に困ってない。今働くのを止めたって一生楽に暮らせるくらいはもう稼いでる。
だから、可能だったはずなのだ。
どこかの一流病院の豪華な檻に私を放り込むとか、とりあえず世間に文句を云わさないだけの処置を施す余裕があった。それで万が一私の両親に裁判を起こされて負けたとしても、それでも大して懐は痛まなかったに違いない。つまり、いくらだって楽な方法を亮は選べた。
どれだけ私が泣いたって縋りついたって、役に立たなくなった私なんか捨ててしまうことなんて簡単に出来たはずだ。
「馬鹿よ…」
腕を伸ばして亮の髪を撫でる。シャツの隙間から覗く首筋まで何だか細くなった気がした。
まるでそれは忘れた者と忘れられた者の差だ。
いつかは思い出すのかもしれないけれど、私には撃たれた記憶はない。あの刹那、とにかく亮の存在をこの世から消させはしないという衝動だけが私を突き動かしていた。思い出そうとしても思い出せるのはあの瞬間の亮への強烈な執着だけで、その後の生活のことなんて霧の中のような、あるいは断片的な場景がほんの少し頭の片隅にあるだけだ。
けど、亮は違う。
夢の中にいたような私と違って、亮はずっと悪夢の中にひとり取り残されていた。
間接的に自分の所為で子どもに戻ってしまった恋人を見る度に一体亮が何を思っていただろう。
私は救うつもりでずいぶんと残酷な真似をしたのかもしれなかった。
口を噤むと涙が出そうだから、私はとにかく思いつくまま唇を動かす。
「ねぇ、亮…こんなの作らせたってことは結婚式あげようとしたの?」
亮は返事をしない。
沈黙が怖いから私は可愛げのない台詞を止められない。
「確かに約束したけど、予定じゃ来月式だったけど、でも私、子供に戻ってるんじゃ結婚しても仕方ないじゃない。経営パートナーとしての能力はゼロになってるし、家事は…まあやってたけど、それでも一人でやらせるのは危ないってずっと誰か付けてんじゃコスト高だし、パパなんて呼ばれてるんじゃ手を出すのも躊躇われるわよね。メリットないじゃない、馬鹿よ、亮は」
「うるせえな」
ぐいっと肩を押される。
よろけて自分のドレスの上に倒れ込む。視界に青い空が飛び込んできたけど、それはほんの一瞬ですぐに亮の手のひらによって暗闇に落とされる。
「いやだ、何よ、亮?」
「バカバカうるせえんだよ。しかも、人のこと散々ワーカホリック呼ばわりしてたくせにてめえこそなんだ、コストだのメリットだの、お前はROIにしか興味がない強欲キャピタリストか?」
「…だって」
「だってもクソもねーんだよ。お前、俺様を誰だと思ってんだ?自惚れてんじゃねぇよ、お前の生産性なんか高が知れてんだ、別にゼロだってこっちは痛くも痒くもねぇんだよ。それに俺が家政婦欲しさに結婚するとお前本気で思ってんのか?役に立とうが立つまいが俺はお前に何か恵んでもらえることなんか期待してねーんだよ。大体なぁ」
いきなり肩を甘噛みされた。
「ちょ…っ」
「……一生抱けなくたって、俺の為に命投げ出すような女捨ててどこの誰と寝ろっつーんだよ」
至近距離で囁かれた掠れた声が私の自由を奪う。
確かめるように頬を撫でられる。
本当に腹の立つ男だ。
泣くまいと一心に耐えていた人の苦労を一瞬で打ち砕く。
口付けられて光を奪う手のひらの下、目を閉じると一緒に涙が零れていった。
睫毛の動きで目蓋を閉ざしたのが解っただろうに、それでも亮の手のひらは私から離れない。その理由を思うと泣きながらそれでも口元が綻ぶ。
何故亮がずっと顔を上げなかったのか、何故亮が私の視界を奪うのか、つまり何故私に顔を見られたくないのか。
プライドが高いくせに意外とセンチメンタルな彼のことだ。
きっと私の想像は間違っていない。
本当はその顔を拝んでやりたい気もしたけれど、解釈の仕方によってはとてつもない愛の告白とも取れる言葉の数々に免じて気付いてない振りを私はしてあげることにした。